Mellow〜海面に咲く華〜 第二話「光の騎士VS迅雷(じんらい)」




登場人物

♂ミカヅチ・アザイ 17歳 行方の分からぬ父親を探すため妹と共にヴァルハラへ転校してきた本編の主人公
                        基本はだらしなく不真面目万歳な性格。若干シスコン

♀アメリア・L・エリダンヌ 17歳 ミカヅチと同じクラスになる国のお嬢様だが、お嬢様という特別視を嫌う。
                            彼女自身もお嬢様には見合わぬ天真爛漫な性格をしているが魔法剣士の腕は一流

♂ハーネル・レッドホーク 17歳 ミカヅチのクラスメイトでミリタリーマニア、不真面目代表
                            制服を着崩したりピアスをしている一見チャラい男だが、ミカヅチ同様なにかとアツいものを秘めている

♀セーレ・ミカール 17歳? 何故かミカヅチのベッドで寝ていた幽霊。何故かミカヅチだけが見える。
                          ちょっと電波がかった謎の子

♂アルバート・ブーン 38歳 ミカヅチのクラス担任。就任15年目のベテラン教師
                          スーツをラフに着こなし、そこから見える逞しい肉体と煙草がトレードマーク。

※各キャラクターのもう少し練った詳細設定はコチラ※


役表(♂3:♀2:N1)
♂ミカヅチ:
♂ハーネル:
♂アルバート:
♀アメリア:
♀セーレ:
♂♀ナレーション:



N:前回のあらすじ。急遽ジパングから転校してきたミカヅチさん。
    ワケわからない夢見たり、隣で寝てた子のおっぱい揉んじゃったり、機銃突き付けられたり
   いきなり知り合ったお嬢様に手を出したと担任から勘違いされたりと大忙し。
    ・・・で、次の授業は3コマを使用した戦闘訓練だそうですよ!


セーレ:第二話「光の騎士VS迅雷(じんらい)」


ミカヅチ:で、何故(なにゆえ)セーレがここにいるんだ?

N:やかましい幽霊っ子がずっと授業妨害らしかぬ事をしてくるので、次の授業まで
   の休み時間をミカヅチは階段の踊り場でセーレに説教していた。

セーレ:いえ、あの話すと長いんですが・・・

ミカヅチ:(※間髪入れず)ん、ならいいわ

セーレ:みっ短くしますから聞いてくださいぃ〜!!まだ行かないでぇ〜!

ミカヅチ:あーもう分かった分かった。簡潔に頼むぞ

セーレ:はい、私ミカヅチさんの部屋を出た後どこも行くアテが無いので、ミカヅチさんの
      後を登校当初からずっと付いて行ってたんですよ。学校に着いてからは中を探検して、
      校庭から校舎を眺めていたらミカヅチさんを見つけたワケです。

ミカヅチ:ふんふん・・・

セーレ:私ミカヅチさんを何度も呼んだのに無視するもんですから呪ってやろうかと
      思って・・・って何でもう行こうとしてるんですか〜っ!?

ミカヅチ:いやだって長(なげ)ぇんだもん・・・

セーレ:そんな面倒な顔しないでくださいよぅ・・・。ミカヅチさん今日会ったばかり
      なのになんでそんな冷たいんですか?

ミカヅチ:いや流石に転校初日から誰にも見えないセーレに構って電波野郎って感じの
        レッテル貼られたくねぇしなぁ・・・

セーレ:それならマルチタスクで思念通話を!

ミカヅチ:何処の魔砲少女アニメの世界だよ・・・。時間ねぇから行くぞ、
        大人しくしてりゃ別に着いてきていいからよ。

セーレ:はい〜

N:気だるそうに教室へ戻り、扉を開くとアメリア達が次の授業の準備をしていた。
    3時間使う戦闘訓練、それぞれが各々の獲物を携えていた。

アメリア:あ、ミカヅチさん。次の授業ですけどミカヅチさん自分の武器は?

ミカヅチ:あぁ、便所がてら職員室行って実家から送られたの受け取って来たよ。
        しかし物騒だなぁ、魔法学校とはいえクラスで戦闘訓練たァよ。

ハーネル:此処アトランティスじゃ森とかで頻繁に魔物が出るからなァ。自分やダチ
        守るため、軍隊に就職する為にゃ必要だからな

ミカヅチ:成程な・・・

アメリア:で、先生から言われたんですが、先にミカヅチさんの能力を診るという事で
        初めに私とミカヅチさんで模擬戦を行う事になったんです。

ミカヅチ:え?俺とアメリアがか・・・大丈夫なのかそれ?

ハーネル:ミカヅチ、こう見えてもアメリアは学年でもトップクラスの騎士だぜぇ?

ミカヅチ:マジか・・・手柔らかに頼むぜ・・・

アメリア:あはは、それはミカヅチさん次第ですよー?

ミカヅチ:痛い暴力嫌いです

ハーネル:嘘だッッ!!!ゼッテー嘘だ!

N:場所は変わって学園の闘技場。コロッセオ的な場所を縮小させたような場所だが
   設備は最新鋭である。中に入るなりミカヅチは呆気に取られる。

ミカヅチ:ほぇー・・・、外は味が出ていたが、中も立派なモンだなぁ・・・

ハーネル:何だっけか、確か昔ここは賭博闘技場で、禁止になってから学校が買い取った・・・
        んで、外観以外の中身をごっそり改装して今の施設になったんだっけ?

アメリア:えぇ、内部のフィジカルトレーニング施設は勿論、ダイビングプールにフリークライミング、
        メインフィールドでは、疑似的に対魔術フィールドを発生させる事も可能なんですよ

ミカヅチ:ほーほー・・・まさに「訓練施設」としては打ってつけか

アメリア:後は魔獣迎撃戦での実戦経験で、めきめきと腕が上がっている方式ですね
        それでは女子更衣室は奥ですので、後ほど

ミカヅチ:おう。・・・どこ行くんだハーネル

ハーネル:いやね、抜き打ちの身体測定でも・・・って止めろ!妙な笑顔で拳は止めろ!ウヴォアー!


アルバート:それじゃストレッチも終わった所で、早速だが2人は準備してくれーぃ
          ・・・お前なんでツラ痣だらけなんだ?

ハーネル:痛い暴力嫌いです

アルバート:なるほどわからん

アメリア:私のレイピアはミスリル強化加工で、魔鉱石による魔力伝導率を底上げしたカスタムメイドです。
        さぁミカヅチさん、貴方の相棒を・・・ご披露なさってくださいませ

ミカヅチ:あぁ・・・、コイツだ。・・・こっちじゃ、あまり見ないだろうけどよ

ハーネル:剣か・・・?、あ・・・あれは・・・ッ!?

アルバート:ほう・・・

アメリア:ッ!?・・・サムライ・・・ソード

ミカヅチ:(・・・親父のお陰で、良い噂にはなっていないだろうな)

N:「サムライソード」、即ち「日本刀」、「鋼の芸術」。
     東洋のごく小さな国にしかなく、アトランティスで使用していたのはミカヅチの父、コンゴウただ一人であり、
     鉄をも裂く化物じみた切れ味を誇っていた為、周りからは「魔剣サムライソード」と呼ばれていた。

ミカヅチ:ここでは西洋刀(サーベル)が主体だったな。悪いが俺のいた国ではコイツが基本形だ。

アメリア:成程・・・相手にとって不足無しとはまさにこの事ですね

ミカヅチ:期待に応えるよう努力はするさ

アルバート:よし行くぞ、相手が負けを認めるかノックダウンか・・・時間無制限の魔力使用自由!

セーレ:ミカヅチさん・・・

アルバート:一本勝負!開始!

N:アルバートの合図と同時に無詠唱で撃ち出されたアメリアの魔力弾。
    3発の光球が牽制の如く真っすぐミカヅチへ飛んでいく

ミカヅチ:(追尾性能は無しの囮か・・・)ふんッ!

アメリア:牽制ですよ、それ!

ミカヅチ:あぁ分かっている、遠慮はナシだぜ?

アメリア:読めましたか・・・本番はここからです!シャイニングアロー!

N:先程とは違い次は矢の形をした光のラインが5本、弧を描きミカヅチへ襲う。
    ここで初めて鞘から刀を抜いたミカヅチ。身体から微量の雷が発生すると
   刀身に左手を滑らせ、刀に集めた磁場エネルギーを突き出した。

ミカヅチ:駆(はし)れィッ!!

アメリア:なッ・・・!? (磁力による防御性能がある射撃魔術・・・!?) 

ハーネル:撃ち出す際の衝撃で矢を弾き飛ばしやがった!?ミカヅチの魔力形態は雷か!

アルバート:だが、アメリアのアローはほんの初級に過ぎない。このまま連射で削ると
          彼は手が出せないぞ?・・・さぁ、次はどう出る

アメリア:プロテクト!・・・やりますね、ミカヅチさん。でもまだまだこれから

ミカヅチ:・・・流石、トップクラスの騎士だ。相手を伏せる矢の最良の数、狙う箇所、そして力加減・・・。
        だが俺も男だ、そう簡単にノされるワケにはいかねぇな・・・

アメリア:(見抜かれた!?相手に直接傷をつけない力で、アゴ・右手・左肩・横隔膜、そして左ヒザ・・・
        一度に撃ちぬいて戦闘不能にさせられる個所をあの一瞬で・・・?)

アルバート:・・・ハーネル。戦闘において、男も女も関係ない考えを持つ人間は
          先導に出る資格を得る・・・と前に教えたな?

ハーネル:ん?あぁ、でもそれが何で今・・・?

アルバート:フッ・・・。恐らく彼は、その資格をとっくに持っていたのかもしれんな

セーレ:(あれ・・・?ミカヅチさんの雰囲気が・・・)

アメリア:(なんだろう・・・妙に息苦しい)

ミカヅチ:(※呟くように)撹乱兵法・・・夜眼「獅子威」(やがん・ししおどし)

N:アメリアに冷や汗が一筋流れる。目の前に立つ男が、ミカヅチ・アザイが、明らかに
   今まで見たミカヅチとは違う事を悟る。所々でミカヅチの身体に稲妻が走ると、
   光の影に暗くなった右目が不気味に光っていた。アメリアは感じ取る、自身に起こる寒気を。
    ブルブルと頭を振りキッと目を開くと、地を弾いてミカヅチに近接戦闘を持ちかける。

ミカヅチ:受けて立とう・・・せいィィィやッ!!

アメリア:(剣の峯で・・・!?)はぁあッ!

ミカヅチ:ぬぅッ・・・おぉッ!

アメリア:たぁーッ!!

ハーネル:クロスレンジの乱打戦になったな・・・。スゲェなミカヅチ、アメリアと
        同等に闘えるとは・・・!今まで生徒じゃいなかったぜ!?

アルバート:(いや違う、彼がコンゴウさんの流派を継承しているとあれば・・・おそらく)

ミカヅチ:シッ・・・おォぉあッ!!

アメリア:っきゃぁ!?

アルバート:巧い・・・!あの乱打の隙間に体術までねじ込んで来るとは・・・

ハーネル:体格差が出てる・・・?いや、アメリアも体術は追随を許さないハズ

アルバート:小回りと技術が良い分アメリアが優勢だとは思っていたんだがな・・・

セーレ:反応速度とリーチはミカヅチさんが上・・・。でもあの戦闘法、見覚えがあるような・・・?

アメリア:このッ・・・はぁあーッ!

ミカヅチ:ッ・・・!いい蹴りだ、まだまだ行くぞ!

ハーネル:アメリアも体術を使うようになってきた・・・なんつーか息苦しい模擬戦だぜまったく

アルバート:いや、それでいい。なかなか見られない緊張感溢れるスパーリングだからな、
                   あのアメリアが本気になるくらいだ、ミカヅチ君は相当の手馴(てだれ)か・・・?

ミカヅチ:迎撃兵法・・・斬波昇・重(ざんばしょう・かさね)ェッ!!

アメリア:(近距離高速砲で・・・!)シャインブレイズッ!!

N:模擬戦開始から20分が経過。生徒は皆息を飲みながら2人の凄まじい闘いを
   食い入るように観る。技術(わざ)と業(わざ)のぶつかり合い、2名は既に肩で
   息をする程体力を消費している。

アメリア:はぁッ・・・はぁ・・・ッ

ミカヅチ:すぅぅ・・・ふぅうぅぅぅぅ・・・ッ

アルバート:20分か・・・そろそろ決まるな

ハーネル:どっちに転んでもおかしくは無いっすね

ミカヅチ:アメリア、そろそろシメに入るかぃ?

アメリア:ふぅ・・・ッ。そうですね、同じことを考えていました

ハーネル:ミカヅチが納刀した・・・?アメリアは・・・ってアレは!?

アルバート:出たな、本気の必勝パターン。最後の一撃には打ってつけだろう

N:納刀し、抜刀術の構えを取るミカヅチ、レイピアを上に向け眼前に止めるアメリア。
    アメリアの足元に、魔法陣が展開され周りが輝き出す。が、一向にミカヅチの身体には
   雷が走らない。だが前髪の陰になっている右目には、鈍く光る眼光ひとつ

セーレ:やっぱり。さっきの技術もあの構えも・・・私は見覚えがある

ミカヅチ:・・・いざ、尋常に

アメリア:勝負ッ!!「天空の使者よ、罪深き彼の者を裁き・安らかな眠りを」
        ・・・『キャット・オブ・ナインテイル』ッ!!!

アルバート:バカなッ!?必勝パターンに更に詠唱付き・・・18本の亜音速光矢(こうや)
          の同時召喚だとッ・・・出血大サービスにも限度があるぞ!?

アメリア:(これで・・・決まりッ)ファランクス・・・シュートッ!!!

セーレ:ミカヅチさん避けてッ!!

ハーネル:ミカヅチィィッ!

ミカヅチ:ちぇぇぇえりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁえぇぇぇりゃぁぁァッ!!!

アメリア:・・・・・・な・・・っ・・・!?

N:鋭く響く咆哮。抜刀したミカヅチは弾丸の速度より速い光矢18本を全て叩き落してしまった。
    ほぼ一瞬の出来事。何が起きたのか分からない、そんな顔をしているアメリアの目の前で
   自身の放った奥義は、無残に光の破片となって砕け散っていった。

    すぐさま納刀し上体を屈めたミカヅチの身体に、ここで初めて稲妻が走る
     ミカヅチの右脚と刀に、走る稲妻が集中していく。ここでセーレだけが、ミカヅチの表情を知る

セーレ:ミカヅチさん・・・口が笑っている・・・?

アルバート:(コンゴウさん・・・貴方の息子さんは、やはり貴方の血を引いている・・・)

ハーネル:全部・・・綺麗さっぱり切り払いやがった・・・?

ミカヅチ:「魔導斬一刀流(まどうざんいっとうりゅう)抜刀兵法」・・・

アメリア:はっ・・・!

ミカヅチ:『渦・迅雷撃(まがつ・じんらいげき)』!!

アメリア:きゃあぁぁぁぁあッ!!?

ハーネル:アメリアっ!!

アルバート:決まったか・・・?

ミカヅチ:・・・・・・ぅ・・・か・・・ッ!

アメリア:ぅ・・・・・・ん・・・へっ・・・?

N:『渦・迅雷撃』、それは雷の力を利用した跳躍で、脈拍4回半の8分の1の速度で突撃、
   チャージで相手の動きを止めると同時に麻痺効果の高い高密度の稲妻を纏った抜刀
   で相手を斬り潰す、高速にして一撃必殺の合戦剣術。

    しかしどうした事か、刀の峯(みね)はアメリアの胸元に丁度触れた所で止まり、
   ミカヅチはズルズルとアメリアの身体をなぞるように落ちて行く。
    我に返ったアメリアが腕元を見ると、レイピアの柄頭(つかがしら)がミカヅチ
   の鳩尾(みぞおち)にめりこんでいたのだった。
    ・・・考えてみてください皆さん、ただでさえ鳩尾パンチしたら悶絶モノなのに・・・ねぇ?

ミカヅチ:ア・・・アメ、リア・・・ッ・・・流石にそりゃ・・・キツイ、ぞ

アメリア:ミカヅチさん・・・すみませ・・・っ身体が・・・!?

ハーネル:ダ・・・ダブルノックアウトぉ!?

セーレ:ミカヅチさぁーん!?

アルバート:両者戦闘不能、いやぁ久々にいいモノ見せてもらったなァ

ハーネル:おいお前ら、大丈夫か・・・?

アメリア:身体が痺れて・・・動けましぇん・・・

ハーネル:刀は当たらずとも魔力は当たるのか・・・、ミカヅt・・・落ちてらァ

セーレ:ミカヅチさーん、しっかりー!

N:よだれを垂らし安らかな寝顔のミカヅチ、苦笑いで仰向けに倒れ所々痙攣しているアメリア。
    かくして、23分に及ぶ死闘(?)は、両者戦闘不能で幕を閉じたのでしたー。

アルバート:はぁ・・・2人まとめて保健室行きだなコリャ


N:次回予告ですよ奥さん!!!

アメリア:あの・・・この痺れ効果はいつまで・・・?

ミカヅチ:・・・・・・。

アメリア:・・・ミカヅチさーん?

ミカヅチ:・・・・・・。

セーレ:次回、「兄妹DE保健室」。作者お気に入りのキャラが新登場です!

アメリア:予告こんな緩くていいんですか・・・?



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