Mellow〜海面に咲く華〜 第三話「兄妹DE保健室」



登場人物

♂ミカヅチ・アザイ 17歳 行方の分からぬ父親を探すため妹と共にヴァルハラへ転校してきた本編の主人公
                        意外とフランクな性格と見せかけて不真面目万歳の皮を被った「武人」。若干シスコン

♀アメリア・L・エリダンヌ 17歳 ミカヅチと同じクラスになる国のお嬢様だが、お嬢様という特別視を嫌う。
                            彼女自身もお嬢様には見合わぬ天真爛漫な性格をしているが魔法剣士の腕は一流

♀レベッカ・フレイズ 16歳 アメリアを慕う後輩。ミズチとスティレットのクラスメイト
                          真面目な性格だが、ミズチの愛で方が半端なかったりする百合っ娘

♀ミズチ・アザイ 16歳 ミカヅチの妹、共にヴァルハラへ転校してくる。
                      重度のブラコン。ミカヅチを慕い、世話をするが少しの事で泣く娘

♂アルバート・ブーン 38歳 ミカヅチのクラス担任。就任15年目のベテラン教師
                          スーツをラフに着こなし、そこから見える逞しい肉体と煙草がトレードマーク。

※各キャラクターのもう少し練った詳細設定はコチラ※


役表(♂2:♀3:N1)
♂ミカヅチ:
♂アルバート:
♀アメリア:
♀ミズチ:
♀レベッカ:
♂♀ナレーション:


アメリア:(別にコンディションが悪い訳じゃなかった・・・。寧ろ兵(つわもの)と闘える
        時点で私も全力を出すことができると思っていた。・・・でも違う。
        あの眼が脳裏に焼き付いて離れない、不気味に光るあの眼が・・・。
        この人は私達と違う「何か」が潜んでいるの?・・・どちらが本当の貴方?)


レベッカ:第三話、「兄妹DE保健室」


アルバート:模擬戦で奥義系魔法の重複発動、全く・・・無茶し過ぎだぞ

アメリア:うぅ、すみません・・・力んでしまいまいた

アルバート:偶然レイピアの柄頭が当たっていなければ、立場は逆になっていただろうな

アメリア:はい・・・本当に偶然でしたから

N:アルバートの手によってミカヅチ、アメリアの両名は保健室送りとなっていた。
  鳩尾に相当深く入っていたであろう。可哀想なミカヅチさん。未だ保健室のベッドで眠ったままである。
  アメリアは痺れが薄れてきたのか、ミカヅチのベッドの横にある椅子に座ったままミカヅチの寝顔を眺める。

アメリア:(まだ右腕がうまく動かない・・・。あの技をマトモに受けていたら私は・・・?)

アルバート:まさか、彼もこの歳で「魔導斬一刀流」を会得していたとはな・・・

アメリア:ま、魔導・・・斬・・・?

アルバート:コンゴウ先生を覚えているな?

アメリア:あぁ、コンゴウ・アザイ先せ・・・アザ・・・イ?・・・まさか!?

アルバート:そうだ、彼はコンゴウ先生の息子。「魔剣」を使う武人の血は彼にも流れている。
          ・・・「魔導斬一刀流」とは、コンゴウ先生がジパングでは有名な「示現流(じげんりゅう)」の型を用いて、
          サムライソード一本で対魔術戦闘を繰り出す為に考案した流派。と俺は聞いている。

アメリア:じげん・・・りゅ?

アルバート:なんとも、「弐の太刀要らず」・・・とまで言われる程の、東洋の頂点に立つ剣術・・・。
           頂点だというのに、向こうの国では一番有名かつポピュラーなサムライソードの流派なんだそうだ。

アメリア:そう、ですか・・・。・・・「弐の太刀要らず」・・・頂点・・・

アルバート:どうした、お前らしくもない。模擬戦でここまで本気でやれたのは久しぶりだろう?

アメリア:・・・違うんです。そう、アザイ先生と同じ人だからこんな・・・模擬戦ですら本気を出さざるを得ない・・・。
       背筋の凍る思いをしたのもそれ以来・・・。実際、途中から私はミカヅチさんの雰囲気・・・
        威圧に耐えるのが精一杯で、身体か硬直して、なんかもう、無我夢中で・・・。

N:その時だった。突如保健室のドアが開けられると、2人の少女が入ってくる。
  緑色の髪をした少女がぐったりしている黒髪の少女に肩を貸した状態でアメリア
 とアルバートを交互に見やると、目をぱちくりさせ。

アメリア:・・・レベッカ?

レベッカ:・・・あっ、皆さんおはようございます!ってどうしたんですかアメリア先輩、
        保健室に居るなんて珍しいですね?

アメリア:うん、ちょっと訓練でね。・・・どうしたのその子?

レベッカ:あぁ・・・今日転校したきた子なんですけど、過度の緊張か急に目まい起こしちゃって・・・

アルバート:・・・んっ?

ミズチ:う〜ん・・・

アメリア:って・・・ミズチちゃん!?

レベッカ:へっ?先輩ご存知なんですか?

アメリア:ご存知というか、私も今朝知り合ったんだけども・・・。それがなんでまた・・・?

アルバート:何とも面白い兄妹だこと・・・。さて、俺はそろそろ授業に戻る。
          アメリア、彼が目を覚まし次第、授業に復帰するように

アメリア:あっハイ、わかりました

ミズチ:はぅ〜・・・

N:レベッカがミズチをベッドに寝かせている間に、アルバートは保健室を後にする。
  手の空いたレベッカは、ここでやっとアメリアの前で寝ているミカヅチの存在に気付く。

レベッカ:先輩、そちらの方は?

アメリア:あぁ・・・この人は私の・・・

レベッカ:「私の」!?ってててて事はまさか先輩のコレって奴ですかッ!?
        だからって付きっきりで看病だなんて!うひー解せませんぞーっ!!!

アメリア:ちっ違うわよッ!!何で皆同じようなリアクションなのよー!?

レベッカ:むぅ・・・では改めてこの方は?

アメリア:今日転校してきたミカヅチ・アザイさん。ミズチちゃんのお兄さんよ

レベッカ:えぇえッ!?・・・老けてるから全然似てませんね

アメリア:そこ!?そこに着眼するの!?

レベッカ:でも何故兄妹揃って何で保健室に居るんでしょうね、特にお兄さんの方は。
        たしか2年生は今日の午前が訓練実習では?

アメリア:うん。それで先生がミカヅチさんの能力測定として、私との模擬戦を組んだのだけれど・・・

レベッカ:(※間髪入れず)先輩がコテンパンにしちゃったという訳ですね!!!

アメリア:えっ?あぁ・・・いや、そうじゃ・・・

レベッカ:(※半ば無視して)流石は学園が誇る「光の騎士」アメリア先輩ッ!!
         いやはや、お兄さんも残念ですねぇ〜。先輩が強すぎて測定どころじゃなかったでしょうに。

アメリア:いやいやレベッカ?だからn・・・

レベッカ:だからせめてもの情けをかけての看病ですか・・・。羨ましいッ!!
        私も先輩の付きっきり看護を・・・!くぅ、先輩の優しさを独り占めなんて贅沢な男!
        このこのぅ!

アメリア:レベッ・・・!

ミカヅチ:カァッ!!!

レベッカ:ひ・・・ッ!?

N:荒ぶるレベッカがベッドに身を乗り出し、鼻でも摘まんでやろうかと手を顔面まで
 伸ばした刹那。カッと目を見開いたミカヅチがレベッカの伸ばされた右手を掴む。
  おぉっと!ここでミカヅチさん、更に空いた手でレベッカの右肩を崩しベッドに引き倒したーッ!
  全く何処の軍人だあんたはッ!!

アメリア:あ・・・・・・(※開いた口が塞がらない状態)

レベッカ:あ・・・あ・・・(※半泣き状態)

ミカヅチ:・・・・・・んっ?何処だここ?

アメリア:(えぇーっ!そこですかーい!?)・・・保健室ですけど・・・ミカヅチさん、下・・・

ミカヅチ:・・・んっ?

レベッカ:ッ・・・ひっ!?

ミカヅチ:・・・・・・あっ!スマンスマン、つい・・・

アメリア:あ・・・あはははは・・・(「つい」なんだ・・・)

レベッカ:・・・・・先ぱあぁぁああああぁいっ!私今の一瞬で修羅を見ました!この人怖いですぅうぅっ!!!

アメリア:あー・・・。よしよし、大丈夫だから。腕は痛くない?

レベッカ:お布団が吸収材になりましたー・・・うぅ。

ミカヅチ:不可抗力たァいえ、何か悪ィ事しちまったな・・・。それも名も知らん女の子に

アメリア:ほらレベッカ、ミカヅチさんに自己紹介は?

レベッカ:うっ・・・れ、レベッカ・フレイズ。・・・魔法化学科の1年生です

ミカヅチ:レベッカか・・・すまなかったな。手癖悪くてな俺・・・
        ・・・でだアメリア、お前は分かるとして何故レベッカが此処に?

アメリア:あぁ、実はミズチちゃんもそこで寝てて・・・

ミカヅチ:はっ!?ミズチっ!

レベッカ:うわぁっ!?

N:ミズチのベッドに身を乗り出したミカヅチは、ミズチの額や首筋に手を当てる。
  アメリアとレベッカはそれを不思議そうに見ているが、口に手を添えた所でミカヅチが溜め息をつき

ミカヅチ:職員室いた時からこの調子だったからなぁ、一気に爆発したか・・・

レベッカ:あー・・・休み時間とか質問ラッシュでしたよ。お約束的な・・・
        東洋からの転入生なんて、今時珍しい以外の何物でもないですから

ミカヅチ:ハァ・・・。特に喘息持ちとか持病がある訳じゃないが、ガキの頃から引っ込み思案でな。
         できりゃ自然に接してやってくれ、こいつは俺とは違って頭柔らかい分ガラス並に繊細なんだ。

レベッカ:はぁ・・・クラスの皆にも言い伝えておきます。

ミカヅチ:昔っから俺の後ろに隠れてオドオドしてた分、ダチも出来にくくてな・・・
        よく話せるようになったのはつい数年前の話なんだ・・・。できりゃ、俺はこいつには此処で
        目いっぱいダチという存在を作っていって欲しい・・・

レベッカ:お任せ下さいッ!私なんかミズチちゃん見た瞬間にこの反則級の愛らしさに一目惚れですからッ!!!

ミカヅチ:そ、そうか・・・。・・・まぁ気に入ってくれたんなら助かる。

レベッカ:えぇ勿論、この子は私がお預かりします・・・ぬふふふふ・・・

ミカヅチ:・・・アメリア、ドタマ大丈夫かコイツ

アメリア:百合の花と捉えてあげて・・・。この子色んな意味で特殊だから・・・

ミズチ:ぅ・・・ぅん・・・?

レベッカ:あっ、気がついた?

ミズチ:ん・・・・・・あれっ?・・・ここ、保健室・・・

ミカヅチ:よ、ミズチ

ミズチ:へっ!?お兄ちゃん!?それにアメリアさんも・・・何で此処に?

ミカヅチ:ったく兄妹揃って転校初日に保健室送りたァ、全くザマねぇやい

アメリア:ミカヅチさんは、戦闘訓練でちょっとね・・・

ミズチ:お兄ちゃん、怪我したの・・・?

ミカヅチ:ん、なァに大した事ない。運悪く横隔膜に入ってちょいと悶絶しただけさ

ミズチ:そう・・・良かった

レベッカ:そうそう聞いてよミズチちゃん!私さっき君のお兄さんに縊(くび)り殺されそうになったんだよ!

アメリア:いや、レベッカそれは大げさ過ぎじゃ・・・?元はと言えばアナタが・・・

レベッカ:だってアレ確実にタマ獲りに来てた眼ですよ!?あぁ思い出しただけでゾッとする・・・

ミズチ:フレイズさん、まさかお兄ちゃんにイタズラしようとしたんじゃ・・・?

レベッカ:ゑ(え")っ・・・!

ミズチ:ダメだよ、馴れてない人が起こそうとすると。肩外されちゃうよ?

アメリア:(し、知ってたのこの人が何をするか!?)

ミカヅチ:なんだ、そうだったのか。まぁ俺も直ぐ気付いたから運がよかったなレベッカ

レベッカ:ひぃぃぃ〜・・・何なのこの兄妹はぁぁぁ・・・

ミズチ:お・に・い・ちゃ・ん・も!いつ身に付けたのか知らないけど、早くその癖直さないといつか絶対誰かの腕折るよ?

ミカヅチ:ハイ、サーセン・・・

アメリア:ははは・・・

ミカヅチ:あぁ・・・そういやアメリア、クラッシュの方は大丈夫か?

アメリア:えぇ、暫く休んでたからもう痺れは残ってませんよ。運よく掠めただけでしたからね

ミカヅチ:んじゃ、俺等は闘技場戻るか・・・。ここで油売ってるワケにもいかねぇしな

アメリア:あっ、ミカヅチさん。コレ先生から預かってた上着と武器です

ミカヅチ:ん、あぁ悪ィな

レベッカ:(あれは・・・?西洋刀(サーベル)でもない不思議な剣・・・)

ミカヅチ:じゃミズチ、また昼飯時になー。ちゃんと休んで授業出ろよ。

ミズチ:うん、またねっ

N:アメリアの後を追うように、首を鳴らしながら気だるそうに保健室を出るミカヅチ。
  ミカヅチの武装を見てからレベッカは難しい顔をして唸っている。ミヅチは首を傾げ

ミズチ:フレイズさん、どうしたの?難しい顔して

レベッカ:お兄さんの武器って剣よね?・・・見たこと無い形してるけど、コッチの?

ミズチ:うぅん、お兄ちゃんは昔から刀しか使ってないよ?

レベッカ:「カタナ」・・・?それって東洋独特の剣なのかな?

ミズチ:お兄ちゃんの話では、西洋では「サムライソード」って呼ばれてるらしいけど・・・

レベッカ:(ま、魔剣・・・!?)へ、へぇ・・・そうなんだ。カタナねぇ・・・

ミズチ:・・・にしてもごめんね、フレイズさん。緊張で倒れるなんて私・・・

レベッカ:いいのいいの!私は保健委員なんだし、大事なクラスメイトなんだから当然!
        それにお兄さんから、ちょこっと話は聞いたからね

ミズチ:転校初日で兄妹揃って保健室送りか・・・はぁぁぁ〜

レベッカ:うん、流石にそれは私も驚いた・・・(特に兄が)

ミズチ:私あがり症で、緊張しちゃうと頭真っ白になっちゃうし・・・迷惑かけてばかりで・・・うぅ・・・

レベッカ:(ウホッ!)大丈夫だよ、これからは私という友達が傍にいるんだから

ミズチ:え・・・。とも・・・だち?

レベッカ:うん、友達、フレンド。・・・・・・アレ?それとも私の一方的な片思いチックな?

ミズチ:う・・・ううん!私、全然友達とかに縁が無かったから・・・聞き慣れなくて

レベッカ:なぁに、新しい生活なんだから、これから作っていくんだよ?・・・君のお兄さんの受け売りなんだけどね

ミズチ:そう・・・だね!うんっ!

レベッカ:ぬふふふ・・・そんじゃぁまずは私を「レベッカ」と呼んでくれたまへ・・・!

ミズチ:へっ?何でっ?

レベッカ:分かってないなァ、友達が友達を名字に「さん」付けで呼ぶかね?

ミズチ:あっ・・・そっか、そうだよね・・・

レベッカ:さぁ来たまえ!セイセイセーイ!

ミズチ:れ、レベッ・・・カ

レベッカ:も・う・一・回♪

ミズチ:(※笑顔で)レベッカ

レベッカ:ぬっはぁ!!?ミィィィィィズチぃぃぃぃぃちゃああああああああん!!!

ミズチ:うわぁっ!?レベッカ、教室にいる時と全然キャラが違うよぉ・・・

レベッカ:可愛いものに目が無いと言ってくれたまえ。さぁ、勢い余って唇奪おうとしても後で
        怖いお兄さんに首折られるかもしれないし、このくらいにしておこう。

ミズチ:あっ、もうこんな時間?

レベッカ:・・・ま、3限目始まる前に戻ろうか

ミズチ:うんっ!


N:あれ?なんか自分今日仕事少ないぞ!?もう次回予告だよ!?

アルバート:生徒二人抱えて歩くのも面倒なんだぞ?特にミカヅチ君はな

ミカヅチ:いや、多分先生だから出来る事だと思います。ハイ

アメリア:今回から入ったレベッカも含めると、また女性率増えましたねぇ

アルバート:男性率少ない台本って実際劇で出てこないんじゃないのかね?

ミズチ:元が元だから仕方ないのでは・・・?

N:今だッ!次回「部の悪くない賭けは大好きですごめんなさい」!・・・よしっ

アルバート:毎度思うが「次回」予告になってないんじゃないのか・・・?



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