Mellow〜海面に咲く華〜 第十話「水色の初陣」



登場人物

♂ミカヅチ・アザイ 17歳 行方の分からぬ父親を探すため妹と共にヴァルハラへ転校してきた本編の主人公
                        意外とフランクな性格と見せかけて不真面目万歳の皮を被った「武人」。若干シスコン

♂ハーネル・レッドホーク 17歳 ミカヅチのクラスメイトでミリタリーマニア、不真面目代表
                            一見チャラい男だが、ミカヅチ同様なにかとアツいものを秘めている

♀ミズチ・アザイ 16歳 ミカヅチの妹、共にヴァルハラへ転校してくる。
                      重度のブラコン。ミカヅチを慕ってる。最近レベッカに狙われてます

♀レベッカ・フレイズ 16歳 アメリアを慕う後輩。ミズチとスティレットのクラスメイト
                          真面目な性格だが、ミズチの愛で方が半端なかったりする百合っ娘



※各キャラクターのもう少し練った詳細設定はコチラ※


役表(♂2:♀2:N1)
♂ミカヅチ:
♂ハーネル:
♀ミズチ:
♀レベッカ:
♂♀ナレーション:



N:学園の昼休み。ハーネルとミカヅチ両名は昼食を済ませた後、屋上に居座っていた。
  缶コーヒー片手にベンチで寝そべっているハーネルと、手すりにもたれながら空を仰ぐミカヅチ。
  ミカヅチはこの時、ハーネルに先日起きたスティレットとの出来事を話していた

ハーネル:そっか・・・。やっぱあいつ等、スティレットと同型だったか

ミカヅチ:あぁ・・・。スティレットはあの組織で2番目に造られた機体だそうだ・・・。
       その先の事はわからねぇそうだが、量産型が出た以上おそらく試作型も先は出てるんじゃねぇかな

ハーネル:なぁ、あいつ・・・アメリアはこの事知ってるのか?・・・この事っつーより、
       スティレットがエリダンヌとは違う別組織のルートから渡ったヤツだって事を

ミカヅチ:スティレットの口ぶりから察するに、あいつ自身は本当の事は知らんだろう。
       良くて「8年前に造られ、アメリアの元にエリダンヌから贈られた護衛型戦闘用アンドロイド」って所か

ハーネル:それってよ・・・国王、アメリアの親父さんも知らない、若しくは隠してるって事にならないか?

ミカヅチ:俺も思った、しかも後者側でな・・・。

ハーネル:はぁぁ・・・わっかんねぇぇー・・・。やっぱ王国側にも裏ってのがあんのかぁ・・・?

ミカヅチ:そいつばかりは流石に駒を進めんとヒントも出てきそうにねぇや。
       現時点でわからん事が山積みだってのに、こうもポンポン新たな問題出されちゃ頭回らんなァ

ハーネル:ん、そういや明日って別の遺跡調査の日だったか?

ミカヅチ:あぁ、アメリアも復帰するらしい。それにミズチと変態暴走娘も今回が初参戦だな

ハーネル:いよいよ総動員か・・・心強さもありゃ、不安もあるわなー。・・・っと、もう時間かぃ

ミカヅチ:なァ・・・次って自習だったよな?先生、たしか出先なんだろ?

ハーネル:あ、そうだった・・・・・・な

ミカヅチ:・・・・・・

ハーネル:・・・・・・フケるか!(※満面の笑みで)

ミカヅチ:Oh Yes!

N:おいちょっと待てバカ2人!


ミズチ:第十話「水色の初陣(ういじん)」


レベッカ:ミズチー?ミーズチー!・・・あるぇー?何処に行ったのやら・・・

N:バカ野郎2人が授業フケると決めた少し後。変態間違えたレベッカは校舎裏をうろついていた
  どうやらミズチを探しているようだが、肝心のミズチが見つからない。校舎の扉が開くと、バカ2人登場

ハーネル:んお?レベッカじゃねぇか、何してんだこんな人気(ひとけ)ねぇ所で

レベッカ:あるぇ先輩方、もう昼休み終わっちゃうのになぜ外へ?

ミカヅチ:無論フケる

ハーネル:ハッキリ言うなお前も!つか質問を質問で返すなバータレ!

レベッカ:あぁ、そうでした。お二人ともミズチ見かけませんでしたか?もう予鈴鳴っちゃうのに
       校舎内に居ないんですよねー・・・。なので今は外を探してるワケです

ハーネル:腹痛でトイレにでも籠ってんじゃねぇか?

レベッカ:残念、私が探した時は全部空いてました

ハーネル:ホントに隅々まで探してやがんのな・・・。ミカヅチは心当たりねぇのか?

ミカヅチ:・・・概ね予想はついている、明日は初陣だからな

レベッカ:・・・どゆこと?

ハーネル:わからん、といあえず付いてってみるか


N:学園体育施設の裏、広い林の入り口付近でミズチが鎮座している。
  ちょうど木漏れ日が射す場所に、姿勢を正し背筋を伸ばした状態で正座しているが、目は閉じられていた。
  膝元には一本の長い薙刀。ミズチはこの時、学園に転校する少し前の事を思い出していた


ミズチ:・・・物を見ないでモノを視る・・・?

ミカヅチ:まぁ、言葉で言ってもよくわからんだろうな。・・・例えば、人気の無い道を自分一人で
       歩いているとする。途中で誰かに見られている、ツケられていると感じる事があるだろう?

ミズチ:うん、でも・・・不審者とかだと思うと怖くて振り向くことができないよね・・・

ミカヅチ:そうだ。とある状況下に陥った際、周りも何も見る事が出来ない時に必要なのが
       「物を見ずモノを診る」・・・。気配そのものを自分の感覚で感じとるという事になる

ミズチ:何か武器でも持ってたり投げてきたりしたら・・・?

ミカヅチ:確かに、コイツを覚えたとしても極めなければ細かい所まで見尽くすのは不可能。
       覚えても恐らく、しばらくの間はせいぜい気配と足音での自分との距離を知る程度だろうな

ミズチ:じゃあ、それを極めるには・・・?

ミカヅチ:必要不可欠なのは、ひとまずドタマの中と身体の感覚を「無」にする事・・・。
       目を閉じ精神を集中させ、自分自身の世界が周りの空気と同化させなければ話は始まらん
         さすれば、気配や距離はおろか、風力や風向き、木から飛んだ鳥の種類や数、自分に落ちてくる
       寸前の木の葉の落下速度や枚数まで知る事が出来る・・・。

ミズチ:ほえぇ〜・・・。流石に私はそこまでは辿り着けないと思うなぁ・・・

ミカヅチ:まずは基本となる精神統一から始まるからな、この場合は部屋でやるより縁側や庭・・・。
       つまり空気を感じやすい場所で行うのが一番だ

ミズチ:・・・頑張る。あ、ねぇお兄ちゃん、この技術の名前は何て言うの?

ミカヅチ:索敵兵法「無限心気(むげんしんき)」。心を無にすれば、読めるのは気だけとは限らん・・・


ミズチ:・・・「無限心気」

レベッカ:あ!本当に居た!おーいミズtんむぐっ!?

ミカヅチ:シッ・・・!まだ出るな、今あいつは周りの空気と同化している

ハーネル:・・・空気に同化ぁ?

ミカヅチ:まぁ見てろ、ちょいと面白いモン見せてやる。と・・・コイツを貰うぞ?

N:ミカヅチがハーネルの上着ポケットからコーヒーの空き缶を引っ張り出す。
  缶を握った手をミズチのいる方向へ伸ばすと、ミカヅチの腕に微量の雷が走った。
  手を放した瞬間、高く乾いた音をたて空き缶は弾き飛び、ミズチの方へ飛んでいく

レベッカ:危(あぶ)

ミズチ:(※間髪入れず)破(は)ぁッ!!

レベッカ:なー・・・・・・いぃい!?

ハーネル:す、すんげぇ・・・。何も見てねぇのに、スチール缶がキレーに真っ二つ・・・

ミカヅチ:見事。大した集中力だ

ミズチ:あ・・・、あれっ?お兄ちゃん?レベッカにハーネルさんも・・・?

レベッカ:ミズチすんごぉぉおおいっ!!!えっ、ちょっ今何で!何したの!?

ハーネル:いや興奮しすぎだろお前・・・確かに凄かったがよ

ミカヅチ:言ったろう、周りの空気と同化していると。極限の集中力でドタマを無にし、
       周りの空気と同化したんだ。だから微量の魔力を纏った缶の存在を察知した。

ハーネル:なるほどわからん

レベッカ:先輩の言い回しは何か分かりづらいんですけどー

ミカヅチ:おめーら・・・

ミズチ:で、お兄ちゃん達はここで何してたの?もう授業始まっちゃうよ?

レベッカ:先輩方は授業サボり、私はミズチ探してた

ハーネル:(※小声)おまっ・・・最初に余計な事言うな!

ミズチ:私を探してたって・・・、次って何の授ぎょ・・・あっ!!?

レベッカ:自分で言っといて今気付いたかアホーっ!何のために武器握ってんの!早く訓練場行くよーっ!!

ハーネル:ホレ、行った行った。遅れんなよー?

ミズチ:あぁあ〜待ってよレベッカぁ〜!

ミカヅチ:やれやれ・・・。あと二分弱で施設に辿り着けんのかあいつ等の足で?

ミズチ:(※遠くから)お兄ちゃん!授業サボっちゃダメだからねーっ!?

ミカヅチ:はは・・・気付かれてたか

ハーネル:一本取られたなァ・・・ま、自習だし今更戻ったってしゃーねぇけどな

N:ミズチの斬ったスチール缶の片方を拾い上げる。切り口を眺めると、紙でも切れそうな程綺麗な
  切断面だった。それを見るなりミカヅチの頬が若干吊りあがっていた。

ミカヅチ:(俺の見えぬ間に此処まで澄んだ太刀筋になっていたか・・・。触れるだけで指も切れそうな、
       刀で斬ればスチール以上のモノも平気で両断できる程に。・・・明日が楽しみだ)

ハーネル:ん?何か言ったかミカヅチ?

ミカヅチ:いやなに、あいつらの初陣が楽しみになってきただけさ・・・

ハーネル:おかしなヤツだな・・・。まァいいか、腹が減ってきたぜ俺ぁ


レベッカ:遂に総動員での調査が開始される。深まる謎のベールは剥がされるのか否か。
         血肉を喰らい人口を増やす死人(しびと)、魔獣たちの其処は巣窟。
       破壊と殺戮の伝道師たち、メロウを知るもう一つの組織、ガンスリンガーの其処はアジト
         次回「BULLET DANCE(バレットダンス)」。鋼と魔法の饗宴(きょうえん)が再開する



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