Mellow〜海面に咲く華〜 第二十話「Der Fall Valhalla」



登場人物

♂ミカヅチ・アザイ 17歳 本編の主人公。日本刀を用いる修羅の戦技「魔導斬一刀流」正統後継者で、屈強な肉体と精神力を持つ武人
                        過去に妹のミズチを護る為に外道へと転生し、二度目の地獄を渡る。実はジパングと王国民の間で生まれたハーフ

♀アメリア・L・エリダンヌ 17歳 ミカヅチのクラスメイトで、エリダンヌ王国の姫君。「光の騎士」の称号を持つ学園最強の騎士
                            魔法剣士の腕は一流だが本物の戦においての経験は少なかった。ハーネル達と戦を経験し心身共に成長していく

♀スティレット ?歳 普段はアメリアのメイドをしている、ガンスリンガー製の戦闘型アンドロイド。
                    正式型番は「ST-02」。たまにやるドジと、ミカヅチのお陰で「ロボだから感情が無い説」に亀裂が入っている

♀ミズチ・アザイ 16歳 ミカヅチの妹、兄同様ジパングと王国民のハーフであり、レアスキル属性「水」の持ち主
                      ミカヅチの肉体の心配をするあまり突っ走りがちになるが、魔力運用はまだ半人前である。

♂エリダンヌ国王 41歳 エリダンヌ王国十世目国王で、アメリアの父親
                            今はアメリア程の魔力を有してはいないが、防御魔法の頑丈さは王国一

♀レベッカ・フレイズ 16歳 アメリアを慕う活発な後輩で魔法化学科トップエリート。ミズチとスティレットのクラスメイト
                          真面目な性格で博士号に近いとも言われているが、ミズチの愛で方が半端なかったりする百合っ娘

♀セーレ・ミカール 17歳? 何故かミカヅチだけには見える死因不明の幽霊。魂だけでは使用不可能な筈である魔法を使うことができる
                          少々電波が通いがちだが、皆の見えぬ中でミカヅチの助太刀をしたり話し相手になっていたりする

♂アルバート・ブーン 38歳 ミカヅチのクラス担任で就任15年目のベテラン教師。レアスキル属性である「視えない魔法」の持ち主
                          コンゴウ・アザイとは古くからの仲で、ミカヅチの修行時代に格技術を教えたことがある。




※各キャラクターのもう少し練った詳細設定はコチラ※


役表(♂3:♀5:N1)
♂ミカヅチ:
♂アルバート:
♂エリダンヌ国王:
♀アメリア:
♀ミズチ:
♀レベッカ:
♀スティレット:
♀セーレ:
♂♀ナレーション:



アルバート:(何故・・・)

スティレット:最前隊、校門前で抑え切れていません。支援砲撃を開始します

レベッカ:ロケットは使わないであげて!最前!スモーク投げるから校門内ギリギリまで撤退して!

アルバート:(何故だ・・・)

スティレット:魔力反応増大、おそらくこの後にもう20体は増えています

アメリア:このままじゃ、学園の防衛システムが先に底をつきそうだわ・・・。
        先生、私達も前進しましょう!このままでは庭内に奴らが押し寄せます!

レベッカ:先輩ヤバい!あいつらシステムの発動オブジェぶっ壊す気でいる!?

アルバート:チッ・・・各自抜刀、弾丸、魔力の使用自由!地獄の雪崩を叩き潰すぞ!!!

レベッカ:了解!エマージェンシーレベルMAX!質量兵器以外は何しても怒られないよ多分!

N:生徒が各々の装備を手に、次々と校庭へと駆け出していく。
   本来ならば普通の学園防衛戦。だが、今彼女達の目の前にいるのは、紛れも無くヒューマンチェンジの大群だった。

アルバート:(何故学園をコイツらが襲撃しているんだ・・・!?)


スティレット:第二十話「Der Fall Valhalla(デアフォール・ヴァルハラ)」


N:一時間前。数日前に謎の血溜りが発見され、騒動となってはいたが学園内はごくごく普通の風景。
   ミカヅチの再生が終わり眠りについてから早一週間、メンバーは少し抜けた日々を過ごしていた。

レバッカ:おはよミズチ、寝癖ひどいよ?

ミズチ:ふぇ?えーと・・ぉ・・・あぁあぁ!なんですかこれは!?

レベッカ:あたしが聞きたいわよっ!ホラこっち向く!スティレット手伝ってー

スティレット:かしこまりました

N:レベッカがショルダーバッグから霧吹き状のボトルを取り出すとミズチの頭にかけていく。
   熱を発生させたスティレットの小さな指が、アイロンのように髪を整えるとミズチは恍惚にも似た表情を浮かべ

ミズチ:・・・極楽じゃー・・・

レベッカ:なに自分の兄みたいな喋り方になってんのよ

ミズチ:ハッ!?

スティレット:終わりましたよ、ミズチ様

ミズチ:ありがとうスティレットちゃん・・・っふあぁぁ・・・ぁふー・・・

レベッカ:年頃の女の子が大口開けて欠伸なんかするもんじゃないわよ?
        授業もうつらうつらしてるし、最近ずっとその調子じゃないの?

ミズチ:あはは、ちゃんと固定した時間数は寝ようとは思ってはいるんだけど・・・

スティレット:・・・ミカヅチ様のお見舞い、毎日行ってらっしゃるのでは?

ミズチ:うん・・・。あっでもちゃんと消灯時間が来る前には病院出てるよ!?

レベッカ:どちらにしろ夜更かしは身体に毒よ?

ミズチ:・・・うぅん。むしろ逆かな

レベッカ:えっ?

ミズチ:いつもと同じ時間には眠れるけど・・・いつもより3時間近く早く目が覚めるの。
      二度寝しようとしても完全に頭が起きちゃって、結局ね・・・

N:ミズチが自分の手のひらを前に出すと、そこにはボロボロになりかけの皮膚と絆創膏があった

ミズチ:お兄ちゃんが居ない間は一人で鍛錬しなきゃいけないから、走ったり、薙刀振ったり・・・。
      やっぱり何かやってないと落ち着かないし寂しいし、数日やってみたらこうなっちゃった

レベッカ:ミズチ・・・

スティレット:・・・皆様、予鈴まであと1分もありませんが

レベッカ:それを早く言えぇえええぇッ!!!


アルバート:おーしお前ら席に着けー。あぁ、見た感じツラ悪そうなのは居ないな。
          ミカヅチは休み・・・お?何だハーネルの姿が見当たらんな?

アメリア:電話かけてみたんですけど、出ませんでしたよ?

アルバート:んー、まぁいいか。どうせ今頃血相変えながらコッチ向かってるだろう
          んでだ。今日は全員知っての通り、エリダンヌ国王様が来訪される。
          そこまで畏まったり態度を変えたりはしなくてもいいとは思うが、粗相のないように。

エリダンヌ国王:(ガラッ!)その通りだ普段の生活というものを見せてくれ!

N:オプーナ再び

アメリア:・・・・・・。

アルバート:・・・・・早く理事長室向かってくれませんか

エリダンヌ国王:大丈夫、長々とありがたい話を聞くのも飽きたのでマッハで済ませてきたぞ

アルバート:生徒が粗相する前にアンタが一番テキトーだ!!!

エリダンヌ国王:つれないではないかアルバート先生、何も授業の邪魔をしようとは思っておらんよ

アメリア:(既にメチャクチャ邪魔してる・・・!)

アルバート:あと何故上着も作業着なんですか

エリダンヌ国王:動きにくいから。ホラ、ジパングにもどこかの地域の代表が作業着で会議とか出たりしているだろう?

アルバート:そ、そうなんですか・・・?いや代表が作業着で会議って・・・

アメリア:せ、先生あの・・・そろそろ時間が・・・

キーンコーンカーン・・・

3人:・・・あっ

エリダンヌ国王:おっといかんいかん、油を売りすぎてしまったか?

アルバート:はぁー・・・。ということだから今日一日がんばってくれ、以上

アメリア:起立・・・

N:アメリアが言葉を発した途端、校内に爆発のような轟音と振動が響いた

ミズチ:きゃあああぁぁぁッ!!?

レベッカ:なっ、何!?今の何!!?

スティレット:至急ヴァルハラの防衛プログラムにアクセスします

エリダンヌ国王:なんだ!?今のは魔力を察知できなかったぞ!?

アルバート:全員とりあえず伏せろ!もうじき学園の防衛プログラムが結果を出す!

アメリア:せっ・・・先生!?外が・・・!

アルバート:・・・・・バカな・・・!

アメリア:ッ・・・電話?・・・レベッカ?

レベッカ:先輩!今スティレットが防衛プログラムにアクセスしたよ!
        今モニター見てるんだけど・・・アレってやっぱり・・・

アメリア:・・・最悪の状況ってヤツよ。待って、今先生に変わる。・・・先生。

アルバート:あぁ。・・・俺だ、視えるの全部ヤツらで間違いないか?

レベッカ:はい・・・。ただ、後ろの方になにか大きめの影が見えるんです。
        でも今まであのタイプで大型って見たこと無いんですけど・・・

アルバート:まさかとは思いたくはないな・・・。全面防衛体制に入るから、お前達も準備してくれ

レベッカ:・・・わかりました

国王:アルバート先生・・・。魔獣が校庭になだれ込むまであとどれくらいかね

アルバート:遅くて1時間、・・・早くて3分・・・。相手がヒューマンチェンジなら後者の可能性・・・。
          緊急迎撃体制だッ!!!迎撃クラス制限解除!全校一丸となって魔獣を排除する!

N:校内にはエマージェンシーコールが響き、辺りは騒然を極め始める。
   防衛プログラムが発動し、校門には魔導結界が一斉に張り巡らされていく。
   ヴァルハラの魔導結界は、とあるモニュメントから発生し、外側からの物理干渉を防ぐ鉄壁である。
   なおかつ、一定レベルの魔法攻撃ならば簡単に蒸発させてしまうハイブリット結界だ

   アルバートは携帯を取り出すと、ダイヤルを押して耳に持っていく

アルバート:・・・ハーネルか?防衛システムの自動応答は来ているな?お前今ドコにいる?
          ・・・・・何!?・・・でかしたぞ。これから俺の言う事を実行してくれりゃ今日の遅刻はチャラだ!
          内申点だってくれてやる!!
アメリア:先生、準備できました!

アルバート:よし。全校のクラスAとCが全員表に出るぞ!クラスBは「ケース・ノルマンデル」で待機迎撃。
          学園側が劣勢と判断した場合、Bも表に投入する!出撃だ!

N:迎撃隊射出用のカタパルトから次々と戦闘員が飛び出して行き、校門へ向かって駆けていく。
   アメリアやスティレット達も、けん制射撃を繰り返しながら最前線へと向かっていった。
   アトランティス史上、最大にして最凶の魔獣迎撃戦が、今始まったのである・・・。


N:広大な台地。周りには生い茂る森林や、清流が自然を芽ぐませている。
   その場所には、ひときわ目立つ建物が一つ。植物の弦は伸びに伸び、風化した石壁を覆っている。

   その入り口のすぐ前、一人の男が目を開いた・・・。

ミカヅチ:・・・・・・セーレ?。

セーレ:おはようございます。ミカヅチさん

ミカヅチ:・・・知らん場所に居るという事は、ようやくくたばったという事か。

セーレ:・・・え?誰がです?

ミカヅチ:俺以外に誰がいるというのだ。お前は既に霊体だろう?

セーレ:もちろんですとも!なのでミカヅチさん、ちょっと起きてみて?

ミカヅチ:あ、あぁ・・・。・・・・・ん?

セーレ:どうしたの?

ミカヅチ:お前・・・なんで足がある・・・!?

N:ミカヅチが目の前で見たセーレには、たしかに足があった。
   セーレはくすりと笑うと指をさす。その指した先は、ミカヅチの下。

ミカヅチ:俺の足が・・・ねぇ!?いや・・・これは魂魄・・・。
        足が虚空に消えて見えるということは、肉体と魂がまだ辛うじて繋がっているのか?

セーレ:そう。だからミカヅチさんはまだ死んでいない。正確には「三途の川の前の前」。
      霊界で川を渡る前の受付をするためにある監査で「貴方死んでないでしょ!」って弾かれてる状態なの

ミカヅチ:なるほど、死んでもいないのに霊界に来てしまったワケか・・・。
        ならばお前の足がしっかりと見えるのにも頷ける。

セーレ:それにしてもミカヅチさん、ずいぶん霊体に詳しいね?前にも経験した事があったり?

N:セーレの言葉にミカヅチがはっとした表情になる。まるでミカヅチが死んだ事あるような解釈
   どう言ったものかと考えながらセーレの方を見ると、ミカヅチは目を見開いた。
   追うように、ゆっくりと視線を上へとやると、自然と笑いがこみ上げてくる。

ミカヅチ:は・・・ははっ、くはははははッ!!!そうか・・・此処だったか!!!

セーレ:・・・・・。

ミカヅチ:この遺跡だ・・・この最深部へ向かう最中で俺は、魔獣に殺された・・・。
        まだ存在しているとは思ってもいなかった。この禍々しい邪気も覚えている。

セーレ:そう、王家の来客である「ミカヅチ・アザイ」が殺された場所・・・。
      でも、魔獣の巣窟になっていていながらそんな事件が起きて、何故この遺跡は処分されないのか?

ミカヅチ:・・・・・たしかにな。

セーレ:アトランティスの遺跡は、余程のことがない限り消えることはない・・・。
      ただでさえロクに調査も進められない状態だもん、不用意に壊せるものじゃない。

ミカヅチ:どこかで聞いたことがあるな。魔導師を連れてさえも、序盤でリアイアしてしまうと。

セーレ:うん。たしかに何もない遺跡もあれば、魔獣でひしめく遺跡もある。
      でもミカヅチさん達が国王様直々の管轄の下で調査をしているから、遺跡の大多数は調査が完了しているよ

ミカヅチ:・・・だが此処は、今まで調査してきた遺跡とは・・・何かが違う

セーレ:そりゃあそうだよミカヅチさん!

ミカヅチ:俺の魂とやらが眠っている・・・ってか?

セーレ:ううん。もっともっと単純なコト

ミカヅチ:・・・単純?


セーレ:――此処はメロウ神が祀られている、アトランティス最古の遺跡だから。


N:セーレの言葉に、ミカヅチは片目を見開く。流石の彼でも驚きを隠す事ができなかった。
   遺跡から溢れ出る禍々しい邪気が、ミカヅチの気を混ざり合い、一層空気が重く感じられる。

ミカヅチ:何故・・・お前がそんな大事な事を知っている?

セーレ:・・・「ミカール」は「ミカエル」の造語。天使を意味する言葉なの。
      そして私の「セーレ」。・・・この名はね、悪魔学における悪魔の名前なんだよ。

ミカヅチ:悪魔学・・・王立図書館でその名を見たことがあるな。
        だが、読んだ限りでは「悪魔」にはほど遠い優しい性質を持っていた気がする。
        確か、召喚者の前現れた時・・・。

セーレ:そう、「望みを何でも叶える」・・・という性質をね

ミカヅチ:ッ・・・!メロウの伝説と類似していないか!?

セーレ:ミカヅチさん。・・・「貴方の願いは、ちゃんと叶っていますか?」

ミカヅチ:ぐォ・・・ッ!?

N:ミカヅチの身体がずしりと重たくなり、何かに引っ張られる感覚が襲う。
   アトランティスに来て初めて見た夢が脳裏を掠めると、ミカヅチは歯を食いしばり上体を起こす

ミカヅチ:セーレッ!答えてくれ、俺の夢に入ってきたのはお前かッ!!!

セーレ:ううん、違うよ。そして、それは私から言える答えじゃない
      ミカヅチさん、今貴方の魂は肉体に戻ろうとしているの、そこで踏ん張っちゃダメだよ

ミカヅチ:ぐっ・・・ぬぅッ・・・お前には聞きたい事が、山程あンだ・・・ッ!

セーレ:答えは、ちゃんとミカヅチさんそのものがこの地に辿り着く事で分かる。
      だから今は行って!ヴァルハラが・・・私達の学園が危ない!みんなの元へ!!

ミカヅチ:バカを言うなッ・・・俺には護る力が、刀がもう無い・・・!

セーレ:ミカヅチさんが何年も血反吐を吐き身に付けた、その外道の技と身体・・・。
      サムライソードが無くったって、割となんとかなるような気がするの

ミカヅチ:・・・お前、最後の最後で曖昧に締めやがったな?普通納得できるかそれで!

セーレ:えっへへ。でも、信じてるから・・・「浅井御雷」の力を。

ミカヅチ:人のハナシ聞かねぇのも相変わらずだな・・・。ぐうぅ・・・ッ!?

セーレ:私はここで待ってる。そして、答えを探そう。

ミカヅチ:ぬぁッ!ぁ・・・うぉあああああぁぁぁぁぁッ!!?



アメリア:シャイニングアロー・ブラストシフト!シュートッ!!!

レベッカ:こンのッ・・・ハーケンブリッツ!吹き飛べェェェ!

N:学園では、まさに魔獣迎撃戦の真っ只中。しかし斬っても撃っても雪崩れ込む魔獣は減らず。
   次々と押し寄せてくる地獄の雪崩に、生徒たちはギリギリの戦を強いられていた。

アルバート:撃て撃て撃て!結界発動機を壊されたら一気に体制が崩れるぞ!
          スティレット!ロケットでデカブツを狙えるか?どうしても足止めが必要だ・・・!

スティレット:あまり何度も使える場所ではありませんが、一発「VSL式」で上空から落とします。

アルバート:あぁ・・・真っ直ぐ飛ばすよりは弾き返される可能性は低いだろう。頼んだ。

スティテット:畏まりました・・・コード「トマホーク」。垂直発射による誘導弾で足止め攻撃を致します。
            弾かれる可能性もありますので、最前の戦闘員は破片と爆風に注意して下さい。

レベッカ:先輩!ミズチ!一旦3歩下がった後、シールド展開するよ!

ミズチ:う、うんッ!

スティレット:発射

アメリア:3・・・2・・・1・・・今よ!ラウンドプロテクト!

レベッカ:シェルタード・ウォール!!・・・って!?

アルバート:何ィッ!?

N:ロケット弾は上に伸ばされた魔導兵器の腕をすり抜けるように、投げ返された。

アルバート:伏せろォォォ――――ッ!!!

スティレット以外の女子:きゃあああああぁっ!!?

スティレット:モニュメントが・・・!

アルバート:バカなッ・・・!

ミズチ:嘘・・・モニュメントが破壊されたって事は・・・

レベッカ:結界が破れて、防衛プログラムが緊急排除モードに切り替わる!

スティレット:急いで皆さん校門の前から校庭に退避してください!
            自動排除システムが熱探知で視えるモノ全てにッ・・・

レベッカ:行くよ先輩!

ミズチ:へっ?えっ!?

アメリア:ミズチちゃん失礼っ。退避ー!

ミズチ:ふわああああァ!?

スティレット:HMG(エイチエムジー)の暴風が叩き込まれます・・・!


ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ!!!!!

ミズチ:わあああああ!?す、すごい轟音・・・!

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!!

レベッカ:まさか私達の代でこのシステムが発動するとは思わなかったわ・・・

アメリア:えぇ・・・魔力が使用される訳でなく単純な防御プログラムだけど・・・

アルバート:一度発動してしまえば、ある意味その場は地獄絵図だからな・・・

スティレット:正面校門に2門、その左右30メートルの間に5メートル間隔で1門ずつ設置された
            「ブローニングM2重機関銃」、ライフル界最強の12.7mm弾が約1分、掃射され続けます。

レベッカ:うへぁ・・・ハーネル先輩がブッ放す時よりも遥かにミンチメーカーだわ

アルバート:(あいつ相当見たがってたから、多分コレ発動したと知ったら泣くんじゃねーか?)

ミズチ:待って!後ろの魔導兵器がまだ動いてる!

レベッカ:往生際が悪いわねェ!・・・ってアレ?2機?ちょっと待って3機のハズよ!?

アルバート:どこだ・・・何処に行った!

スティレット:間もなく掃射が終了します

N:一分近くまともに50口径のライフル弾を浴びた2機の魔導兵器は、装甲を砕かれ次々と部分爆発していく。
   やがて損傷に耐え切れず崩れ落ちた兵器は、内部から黒煙を上げて沈黙していった。

アルバート:対物狙撃銃に使用される50口径弾だ、魔鉱石を使っているとはいえ流石のデカブツも蜂の巣となったか
          しかしもう一機はドコへ行きやがった・・・?跳んだとは思えん、後退か?

アメリア:先生、近くまで行って2機を確認しましょう。システムの再装填には5分くらいかかるハズです

アルバート:よし、お前ら着いて来い。まだ魔獣自体にも生き残りがいるかもしれんからな

ミズチ:わ、分かりました

スティレット:・・・弾丸の熱で熱源センサーが役に立たないですね。肉眼で確認しましょう

ミズチ:うわぁ・・・なんかハマチの餌みたいになってる・・・。
      銃ってやっぱ凄いんだね。一分であれだけ居た魔獣が全滅になるなんて・・・

レベッカ:(あんたの兄はその銃すらも凌ぐ速度で攻撃できるでしょうが・・・)

スティレット:この魔導兵器・・・無人ですかね。・・・いや違う、魔心炉が組み込まれています

アメリア:うまく弾丸が何度も炉心を直撃してくれたのが幸いよね。
        魔鉱石に人工筋肉ときたら、もしかしたら再生能力も使われてたかもしれないわ

スティレット:(良かった・・・液体金属は使われていないのですね)

アルバート:ッ!?お前ら!今すぐ離れろッ!!!

アメリア:えっ?

N:アルバートが叫んだ瞬間、2機の魔導兵器が動き出し、そのまま宙を舞った。
   2機はそのまま校門の両端へ一直線へ飛んでいき、掃射システムに直撃すると校門もろとも爆発を起こした

アメリア:きゃああっ!!?

レベッカ:うあぁあああぁッ!?えっ、ちょ!何でッ!?

ミズチ:3機目・・・3機目がっ!?

アルバート:バカな・・・。そうか!2機を盾にずっと下に潜っていたのか!!!

スティレット:防御プログラムの全破壊を確認しました・・・。あの魔導兵器は、ほぼ無傷です・・・

アルバート:ダメだ!一旦後退だ!やむを得ん、広い校庭におびき出して全員で叩くぞ!

エリダンヌ国王:アルバート先生!

アルバート:国王様?どこに・・・って校舎内かよ!拡声器なんてドコから引っ張ってきたんだあの人!?

エリダンヌ国王:学校の被害は最小限に抑えたい!今から私が施設全体に結界を張りましょう!
              校庭の後始末は王国の災害担当に任せる、どんな手を使ってでも校庭で仕留めてもらいたい!

レベッカ:・・・割とここの国王も某先輩に劣らず無茶な注文してくるよね

ミズチ:でも、こんな広い施設に一人で結界なんて・・・

レベッカ:多分、一人じゃないよ

エリダンヌ国王:天空より降り注ぎし光明よ、風に乗りし天魔の粒と共に生きながらえん・・・

スティレット:ヴァルハラには結界専門の魔導師が数多く存在しています。

ミズチ:結界専門・・・防御のスペシャリスト・・・

エリダンヌ国王:共に生き光の粒となりて、か弱き人間を護る為・・・今ここに喚(よ)ぶ

アメリア:お父様・・・10世目エリダンヌ国王は、その中でも最強。
        ルキウスの無限光を巧みに操った防御結界は、「鉄壁」そのものよ

エリダンヌ国王:ヴァルハラは・・・墜とさせん!往くぞ皆の衆!
              「ヴェスタング・フォンリーフ」!!!

N:浮かばせた魔法陣に、国王と結界魔導師が同時に手を付けると施設全体が薄い光に包まれる
   そのまま光の壁は前に倒れこむと、校庭をドームのように隔離させた

エリダンヌ国王:む、術式にムラが生じてしまったか・・・?
              スマン!アルバート先生!結果として君たちを閉じ込めてしまう形になってしまった

アルバート:いや、小回りが利くのは私達人間です。そして此処には精鋭がいる。
          校庭への被害は最小限で済まされると私は思いますよ

エリダンヌ国王:・・・頼んだ!

アルバート:全員散開!まずありったけの飛び道具で脚を狙え!ヤツが崩れた時に間接を潰すぞ!
          だが正直何があるかわからん!さっきのようになりたくなければ質量兵器はナシだ!

アメリア:そうと決まれば、バレットモード!スティレット!7.62mmで援護お願い!

スティレット:畏まりました。ミズチ様、射撃魔法は扱えますか?

ミズチ:流石に射撃魔法までは・・・。でも水圧を極限まで上げて、薙刀を弾き飛ばす事なら!

アメリア:い、いかにもミカヅチさんが考えそうな戦法よねソレ・・・

レベッカ:先輩、わたし頭の中にペットボトルロケットが出てきた

アメリア:でも一つの正解なのよね。昔どこかの国に「ウォーターカッター」っていう装置があったけど
        水を音倍速で噴射する事で鉄を切断してたのよ。魔法で応用したら貫通力はあると思うわ

スティレット:サムライソードと同じ材質で作られた刃なら、装甲を突いて魔心炉に一太刀浴びせられるかもしれません。

アルバート:決まったか?

アメリア:はい。私とスティレットが射撃で脚を崩します。魔導兵器が転倒した所に
        ミズチちゃんが薙刀を水圧で射出、胴体に刺さって魔心炉へダメージを与え次第、
        火力重視の肉弾戦で袋叩きにします。

アルバート:なんか、いかにもミカヅチの戦法移ってないかお前ら?

ミズチ:先生それさっきアメリアさんに言われました

レベッカ:ま!でもコレが今の所最高の策ってワケよね?なら私と先生は待機待機!

アルバート:ま、いいか。しっかり頼む、これで決めるぞ!

女4人:はい!

N:元気よく返事をした4人。既にバレットモードの充填を完了させていたアメリアが先手を切る。
   スティレットがアメリアの半時計周りで魔導兵器の周りに弧を描く。
   アルバートとレベッカの後ろに隠れたミズチは、薙刀を逆手に握り、全神経を集中させた。

スティレット:お嬢様、足首、膝の関節部分に各50発ずつ叩き込んでください

アメリア:了解ッ!受けなさい・・・「シャイニングバレット・コード『アプトマッド』」!

アメリア:(ハーネルさんに教わった銃剣格闘の構えがこんな所で役に立つなんてね・・・)

ミズチ:心は無、身体は無・・・気を用いて気を読み、私は空気と同化する・・・

アメリア:スティレット、あと何発!?

スティレット:半分を切りました。脚部の温度上昇を確認、あと一息です。

アメリア:速度上げるわよッ!

ミズチ:浅井鋳我(いんが)流礼法・・・「破魔之刀擲(はまのとうてき)」
      ・・・お願い、上がって。

アルバート:(ミズチの周りは清流のようだというのに、腕だけはまるでダムの排水だ・・・)

レベッカ:先生っ、魔導兵器が!

アメリア:倒れなさい・・・シュートっ!!!

アルバート:崩れるかっ!ミズチ!

ミズチ:解除ッ!!!

レベッカ:ブチかませーっ!

ミズチ:「水龍断空閃(すいりゅうだんくうせん)」ッ!!!

N:目の前が開けた瞬間、開眼したミズチは槍投げの構えでステップを踏む。
   逆手に握られた薙刀を手から放す瞬間、手と薙刀をに纏っていた水が一気に圧力を開放する。
   圧力によって加速された薙刀が水から解き放たれた瞬間、ほぼ一瞬で魔導兵器の胴体を捕らえた。

レベッカ:ドンピシャ!やったぁ!

ミズチ:ダメっ!私の腕が耐えられなくて、入射角がブレた・・・!

アルバート:浅かったか!来いレベッカ、あのまま押し込むぞ!

レベッカ:アクセルエッジ!

アルバート。レベッカ:てぇエエエぇぇぇぇいッ!!!

アルバート:ごォっ・・・!?

レベッカ:かっ・・・ッ!?

アルバート:ぐおぉあぁぁッ!!?

レベッカ:ぐぁッ!?・・・あぅ・・・ぅ

アメリア:先せっ・・・きゃああああぁッ!?

スティレット:くぅッ・・・!・・・魔心炉に届かなかった・・・!?

ミズチ:そん・・・な・・・

エリダンヌ国王:先生!アメリアッ!?

N:アルバートとレベッカの特攻虚しく、振り回された魔導兵器の腕が二人を直撃。
   吹き飛ばされた二人はそのままアメリア達を道連れに地に叩き付けられた。
   ただひとり、魔導兵器がゆっくりと這いずる先に居るミズチを除いて・・・

ミズチ:ぁ・・・あっ・・・

アルバート:ぐぅ・・・ッ!マズい・・・逃げろミズチっ・・・!

スティレット:(関節駆動異常なし・・・救出活動・・・可能)

アメリア:ダメっ・・・あの子完全に腰が抜けて動けない・・・

ミズチ:ぁ・・・たす・・・けて・・・・・

アルバート:(動けん・・・!これまでかッ・・・!)

ミズチ:守れなかったよ・・・お兄ちゃん・・・

エリダンヌ国王:マズい!結界を解除して魔導兵器に魔力高速砲を!

ミズチ:お兄ちゃん・・・助けて・・・ッ

スティレット:アクセルエッジ!

N:目の前まで迫った魔導兵器は彼女の願い虚しく、その豪腕を振り上げる
   アクセルエッジで加速したスティレットは、ミズチを庇うように覆いかぶさった。

エリダンヌ国王:間に・・・

スティレット:合わなかった・・・ッ!



ミズチ:お兄ちゃぁあああああああああぁぁぁんッ!!!



ミカヅチ:チェェぇぁストォぉオオオオオォォォぉぉぁあああぁッッッ!!!!!



N:その刹那、魔導兵器に一本の雷撃が鳴り轟いたのだった





TOPへ戻ろう(仕様により予告はありません)

inserted by FC2 system